診療案内
‐会陰ヘルニア‐
このページでは老齢の未去勢雄に多い「会陰ヘルニア」について説明します。
当病院ではメッシュ法と言われる会陰ヘルニア整復手術を積極的に行い良好な術後成績を示しています。ご紹介でこられる患者様も多いため詳しく説明したいと思います。
会陰ヘルニアとは
会陰ヘルニアとは、骨盤隔壁と会陰部の筋肉の脆弱化が主な原因となってヘルニア孔(筋肉間のすき間)ができ、その隙間に便が溜まった直腸が入る込むことでお尻周りが膨れあがり排便困難を引き起こす疾患です。
重度になるとその隙間に腹腔内臓器の膀胱や小腸が入り込み、緊急状態になることもある恐ろしい病気です。この筋肉の脆弱化には男性ホルモンの影響や腹圧の上昇や筋力の低下を引き起こすような病気などが関係していると考えられています。会陰ヘルニアは7歳以上の未去勢犬に多く見られます。
簡単な図解です。ヘルニア部位と書いてある所が便が溜まり膨れてきます。
実際の症例です。かなり重度の会陰ヘルニアで、早急な外科的整復手術が必要です。
治療方法
以前の技術では、萎縮した筋肉を縫い集めてヘルニア孔を閉じていましたが、再発率が30%前後と術後経過に不安がありました。
しかし現在では、人医療の鼠径ヘルニアの手術で使用されているポリプロピレンメッシュを使用したヘルニア孔の閉鎖手術方法が開発され、この方法で整復手術した場合の成功率は95%以上、再発率も約3%以下まで改善されました。
当病院でも会陰ヘルニアに対してポリプロピレンメッシュを使用した方法で積極的な手術治療を行っております。
使用するメッシュ材です。 去勢していない犬の場合は再発しやすいため、会陰ヘルニアの治療と同時に去勢手術を行うことがすすめられています。
【予防】去勢手術を行うことで発生率は低下する
会陰ヘルニアは、去勢手術を行うことで発生率は低下します。また、無駄吠えが多いと腹圧が高くなってくるため、むだ吠えをさせないようにしつけることが重要です。肥満していると内臓脂肪が増えるだけでなく体全体の筋力が低下しやすくなるため、肥満をさせないといったことも予防につながります。
実際の手術症例
症例:犬 Mダックス 雄 8歳
主訴:2ヶ月前から排便に時間がかかるようになり他病院にて便を出してもらっていましたが、1週間前から排尿もできないとのことでかかりつけ病院からの紹介にて来院されました。
来院時、肛門右脇が大きくふくれており、レントゲン検査にて膀胱が反転してヘルニア嚢に嵌頓しておりかなり重度の状態でした。
来院時レントゲン検査:重度の便秘および膀胱の反転が認められました。
緊急を要する状況で飼い主様の希望で手術にて反転した膀胱の整復およびヘルニアを起こした箇所の整復手術を行いました。
肛門右側の重度の会陰ヘルニアが認められます。
反転していた膀胱を整復しました。一部膀胱が損傷で赤黒くなっていました。 精管を腹壁に固定し、膀胱が再度ヘルニア嚢に入りこまないようにしました。
両側とも会陰ヘルニアが重度であったためポリプロピレンメッシュを用いて両側同時に整復を行いました。
最後は縫合して終了しました。
術後初日から排尿が認められ、2日目から自力排便も可能になりました。その後経過良好で、現在手術して1年半程経過しますが、再発もなく元気で過ごしています。 会陰ヘルニアを発症した犬に対して様々な治療法がありますが、このようなメッシュを使用した外科的整復手術が今のところ最も効果的で再発もほぼありません。万が一、膀胱や小腸などの内部臓器がヘルニア孔に飛び出した時には緊急状態になるため、そうなる前に治療してあげることがベストです。会陰ヘルニアにお困りでしたら当院に遠慮なくご相談下さい。