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診療案内

‐脳神経外科‐

犬、猫にも人と同じように現在ではCTやMRI検査機会の増加により様々な脳神経疾患が診断できるようになり、特に当院では脳神経外科が必要な疾患に対して積極的に治療しております。その中でも、動物で診断、治療することの多い、椎間板ヘルニア、脳脊髄腫瘍、環軸亜脱臼について説明致します。

1.椎間板ヘルニア

犬の脊髄は脊椎(背骨)で守られており、それぞれの脊椎の間には椎間板があり、その中心部に髄核と、その周囲を線維輪に取り囲まれています。この椎間板が脊髄側に飛び出し、脊髄を圧迫するのが椎間板ヘルニアです。発生場所は胸腰椎と頚椎が多く、症状は程度により様々で、痛みだけの場合もありますが、重度の場合は足の麻痺が発生し、歩行できなくなる場合もあるため早期の診断、治療が重要となります。

椎間板ヘルニアの図解

外科療法

椎間板ヘルニアの治療

椎間板ヘルニアの治療は大きく分けて内科療法と外科療法に分けられます。
<内科療法> 脊髄の圧迫の軽度な子、症状の軽い子に対しておこなわれます。ただし内科療法をおこなっても症状が進行したり、急に歩けなくなったりすることもあるため注意は必要です。内科療法では、安静(ケージレスト)と鎮痛剤(主に非ステロイド系消炎鎮痛剤)が治療となりますが、これらの治療で改善がない場合は外科手術をおすすめしています。 <外科療法> 内科治療で改善ない場合や、症状が重症な場合に実施されます。外科療法で最も大切なことは、原因となっている椎間板の場所を特定することです。手術の場所を特定するためにCT、MRIなどの検査をおこないます。手術では、原因となっている脱出した椎間板物質を摘出し、術後はリハビリを行います。

実際の症例①:胸腰椎椎間板ヘルニア

症例:ミニチュアダックスフント 5歳 去勢雄
主訴:一昨日から両後足が全く動かなくなったとのことで来院されました。
診察時に両後足完全麻痺、深部痛覚が消失しており、グレード5の胸腰椎椎間板ヘルニアと診断しました。MRI検査を実施し、胸椎12番目と13番目の間の椎間板が脊髄に圧迫している所見を認めたため、飼い主様とご相談して手術を行いました。

外科療法

椎間板ヘルニア手術は主に拡大鏡、もしくは顕微鏡下で実施します。 手術では、造窓する椎弓を露出し、椎弓をラウンドバーにて造窓、圧迫していた椎間板物質を細い鉗子で全て摘出し、脊髄の圧迫が解除されたのを確認し、手術摘出としました。

外科療法
外科療法

術後は約1ヶ月でほぼ以前と変わらず歩けるようになり、症状は重度でしたが無事完治することができました。ミニチュアダックスは椎間板ヘルニアの再発も多いので、注意が必要です。今では元気に走り回っており、経過良好です。

実際の症例②:頚椎椎間板ヘルニア

症例:ミニチュアピンシャー 9歳 雌
主訴:1週間前からの頚部痛と両前肢不全麻痺で来院され、頚部椎間板ヘルニアが疑われMRI検査を実施しました。 その結果、頚椎2番目と3番目の間の椎間板が脊髄に圧迫している所見を認めたため、飼い主様とご相談して手術を行いました。

外科療法

手術では、腹側アプローチ(ベントラルスロット)で実施し、圧迫していた椎間板物質を細い鉗子で全て摘出し、脊髄の圧迫が解除されたのを確認し、手術摘出としました。

外科療法
外科療法

術後は1週間でほぼ以前と変わらず歩けるようになりました。頚部の椎間板ヘルニアは、胸腰椎椎間板ヘルニアに比べて手術で早期に改善することが多いです。今では元気に走り回っており経過良好です。

椎間板ヘルニアの第3の治療法:経皮的椎間板レーザー減圧術(PLDD)

PLDDとは、Percutaneous Laser Disc Decompressionの略で、椎間板に注射針を穿刺し、その中にレーザーファイバーを挿入し、逸脱した椎間板を蒸発、治療する方法も実施しています(経皮的椎間板レーザー減圧術)。医学領域では確立された方法で、犬の椎間板疾患に対する半導体レーザーを用いたPLDDも安全性と有効性が確認され、椎間板疾患の新たな治療法として報告されています。当病院でも現在、内科、外科の中間に位置する処置として、レーザーによる経皮的髄核減圧術を行っています。

外科療法

レーザーを照射し髄核の一部を蒸発させ空洞をつくります(左図)。空洞ができたことで神経根を圧迫していた髄核圧が下がり、椎間板ヘルニアが治療できます(右図)。 半導体レーザーや外科用デジタルCアーム装置を使用して治療します。

実際の症例

症例:14歳 シーズー 去勢雄
2週間前から頸部痛と、後肢のフラつき(グレード2)があり近医にて2週間ほどケージレストによる安静と消炎鎮痛剤治療を実施しましたが痛みが継続して認められたため当病院を紹介、受診されました。症状から椎間板ヘルニアが強く疑われたためMRI検査を行いました。

外科療法

MRI検査では、頸椎4番目と5番目、5番目と6番目の間の椎間板ヘルニアが確認されました(右図)。また、胸椎13番目と腰椎1番目、腰椎1番目と2番目の間にも椎間板ヘルニアが確認されました(左図)。臨床症状や経過、MRI画像所見から、慢性多発性のハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアと診断しました。治療では、PLDDはこの症例のような慢性多発性のハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアが適応となります。そのため、今回は経皮的椎間板レーザー減圧術をご提案し、そちらは希望されたため実施しました。

外科療法

経皮的椎間板レーザー減圧術では全身麻酔下で行います。注射針(22G)を使用して治療します。頸椎(右図)と腰椎(左図)の療法を実施しました。椎間板の髄核に注射針(22G)を穿刺し、その中にレーザーファイバーを挿入し、レーザーを照射して髄核を蒸発させ椎間板ヘルニアを治療します。

外科療法

デジタルCアームレントゲン下で椎間板内に針が挿入していることが確認できます。 頸椎(右図)腰椎(左図)

レーザー焼烙時間は1箇所あたり5分ほどです。PLDDの利点として、この症例のように頚椎や腰椎に多発している場合、同時に全て治療可能な点も挙げられます。 経過は処置後4日ほどで痛みは消失し、20日ほどで後肢の歩行不全も改善しました。PLDDは今症例のように、高齢で慢性化した多発性のハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアに最も効果的で、改善率は80〜85%と報告されています。

2.環軸亜脱臼

頭部の回転運動を担っている、第一頸椎(環椎)と第二頸椎(軸椎)の関節が不安定になることにより、頸部の痛みや四肢の麻痺などがおこる疾患です。先天性の環軸亜脱臼は、多くの場合、小型犬でみられ、若齢で発症することが多いといわれています。 原因として環椎と軸椎の先天的な奇形や靱帯の剥離などにより、関節の安定性が失われて亜脱臼を起こし、その結果脊髄を圧迫することで症状が発症します。 症状として、頸部の痛み、ふらつきや四肢の麻痺、起立不能などがみられ、脊髄の損傷が重度の場合には、呼吸停止が起こり、死亡に至ることもあります。

四肢に神経学的な異常がみられず、頸部痛のみが見られる場合には、ケージレスト(安静療法)や痛み止めなどの保存療法を行うことがあります。しかし、頸部の痛みが重度の場合、四肢麻痺などの神経症状を伴う場合には、外科手術による関節の固定が必要になります。神経症状があっても早期に手術が実施された場合は回復することの多い病気です。しかし、長期に内科治療で経過を見すぎて筋肉が萎縮し長い期間寝たきりの場合には手術をしても改善しない場合もあるため、当院では早めに適切な治療をお勧めしております。

実際の症例①

症例:チワワ、1歳、去勢雄
2ヶ月前からの四肢不全麻痺と頸部の痛みが認められ、症状が徐々に悪化してきたため来院、MRI検査にて、第一頸椎(環椎)と第二頸椎(軸椎)の亜脱臼、および軸椎の歯突起による脊髄圧迫が認め、環軸亜脱臼と診断されました。症状が重度であったため、手術を実施しました。

環軸亜脱臼
環軸亜脱臼

環軸亜脱臼
環軸亜脱臼環軸亜脱臼

手術では圧迫のあった軸椎の歯突起をバーで切削、除去し、環椎と軸椎を正常位置に整復し、ピンと骨セメントで固定し、手術終了としました。

環軸亜脱臼
環軸亜脱臼

手術後のレントゲンで、ピンの位置に問題ないことを確認しました。術後経過も良好で、術後4日目から歩行可能となり、術後1ヶ月には正常な歩行まで改善しました。 この疾患は手術での予後が良いため、可能であれば出来るだけ早めの手術をお勧めしています。

3.脳脊髄腫瘍

犬、猫でも脳や脊髄に腫瘍が発生することがあり、てんかん発作や旋回運動、失明、四肢麻痺など、腫瘍の発生場所によって様々な症状を示します。 また、進行性であるため、最終的には命に関わる重大な疾患です。診断にはMRIなどの精密検査が必要で、手術、放射線、抗がん剤、抗てんかん薬などの治療が行われますが、当院では、脳や脊髄に腫瘍が見られた場合、外科が必要であれば速やかに手術を実施しています。

実際の症例①:脳腫瘍

症例:ゴールデンレトリバー 8歳 雄
1ヶ月前からの歩行異常、発作を主訴に来院、MRI検査にて左側頭葉にリング状の造影増強効果のある腫瘤性病変を認め、脳腫瘍と診断されました。発作の頻度が多く、症状の悪化が見られたため、脳腫瘍摘出手術を実施しました。

脳腫瘍
脳腫瘍

MRI検査画像:左側頭葉に腫瘍(赤矢印)を認めました。

脳腫瘍
脳腫瘍脳腫瘍

手術では左側頭骨からアプローチし、脳腫瘍を摘出しました。

脳腫瘍
脳腫瘍

術後のMRI検査で、腫瘍がほぼ全て摘出されたことを確認しました。 術後経過は良く、術後4日目には無事退院し、発作や歩行異常も改善しました。病理組織検査でグリオーマと診断されたため、術後化学療法を実施し、現在術後7ヶ月以上経過しますが、発作などの症状もなく経過良好で観察中です。

実際の症例②:脊髄腫瘍

症例:パピヨン 12歳 雄
1ヶ月前からの右前肢跛行が認められ、最近は起立ができないとの主訴で来院、MRI、CT検査にて頸髄に腫瘤性病変を認め、脊髄腫瘍と診断されました。 症状も進行性に悪化していたため脊髄瘍摘出手術を実施しました。

脊髄腫瘍
脊髄腫瘍

MRI、CT検査で脊髄腫瘍(赤矢印)を認めました。

脊髄腫瘍
脊髄腫瘍脊髄腫瘍

背側アプローチにて脊髄腫瘍(黄矢印)を摘出しました。

術後3日には起立可能となり、術後14日目には歩行もできるようになりました。病理組織検査で悪性神経鞘腫と診断されたため術後化学療法も実施しましたが、術後6ヶ月時点では歩行に問題なく、経過良好で観察中です。

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診療時間

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