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診療案内

‐IVR:インターベンション・ラジオロジー‐

IVRはインターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略で、画像下治療という和名があり、X線透視やCTなどの画像でからだの中を 見ながらカテーテルや針を使って行う最先端治療です。動物の高齢化に伴い通常の手術では負担のかかる治療も、この技術があれば最低限の負担で最も効 果的な治療を実施することができます。

動物の体への負担が圧倒的に少ない

IVRは、外科手術のようにおなかや胸を切らずに、体の奥にある臓器や血管の治療ができる方法です。
そのため、動物の体への負担が圧倒的に少ないという特徴を持っています。
また、医療器具を入れる穴も数ミリ程度と小さく、処置後の傷もかなり小さいです。IVRには血管系IVRと非血管系IVRに分類されます。

獣医学領域におけるIVR

1. 超選択的動注化学療法(がんカテーテル治療):血管系IVR

当病院では、国内の動物病院ではまだほとんど行われていない超選択的動注療法(がんカテーテル治療)を実践しています。
超選択的動注療法は、これまで手術が難しく治療を諦めていた犬や猫のがんに対して、有効かつ負担の少ない最先端治療です。


また、IVRに必要不可欠な機器として、デジタルCアーム装置「OEC ONE」を導入しています。
この機械は血管のみ抽出して画像化する「サブトラクション機能」と造影した血管にカテーテル操作のランドマークとなる「ロードマップ機能」搭載しているため、血管造影に特化した最新型のCアーム装置です。

  • 治療に使用するマイクロカテーテル

【実際の症例】

症例1:17歳 猫 下顎に発生した腫瘍
摂食障害を主訴に来院、下顎全域に腫瘍が認められ、病理組織検査にて「扁平上皮癌」と診断されました。

下顎に発生した腫瘍
飼い主様とご相談の上、外科手術は猫が17歳と高齢であったので飼い主様が外科手術を選択されませんでした。
そのため、少しでも腫瘍を小さくし、痛みを軽減する目的で超選択的動注療法(がんカテーテル治療)を実施しました。
まず総頸動脈にシースを設置後、カテーテルを挿入し、造影剤にて頭部の血管の走行を確認し、腫瘍に分布する血管を判断しました(左図)。
次に下顎の腫瘍に分布する血管までマイクロカテーテルを挿入し、下顎腫瘍領域に造影剤が分布しているのを確認しました(右図)。
目的の部位までカテーテルの先端が到達したら、カテーテルを通して抗がん剤を注入しました。これで治療は完了です。
投与20日目の下顎腫瘍の写真です。明らかに腫瘍が縮小し、猫の痛みも軽減、食事も採取可能となりました。
現在、がんカテーテル治療から約4ヶ月経過しますが、食事も可能で腫瘍の再増大もなく、経過良好で観察中です。

【実際の症例】

症例2:16歳 猫 鼻腔内腫瘍
慢性鼻炎を主訴に紹介、来院されました。原因を特定するためCT検査と鼻腔内の組織検査を行ったところ、「鼻腔内リンパ腫」と診断されました。

鼻腔内に占拠性病変が認められました。
鼻腔内に発生したリンパ腫は、静脈から入れる通常の抗ガン剤療法ではあまり効かないため、放射線治療が第1選択となります。
しかし、放射線治療器は熊本になく、また何度か麻酔をかける必要があるため、放射線治療は希望されませんでした。
そのため、直接、鼻腔内腫瘍に抗がん剤と投与する、超選択的動注療法(がんカテーテル治療)を実施しました。
今回は、鼻腔内腫瘍に分布する血管までマイクロカテーテルを挿入し、鼻腔内領域に造影剤が分布しているのを確認し、カテーテルを通して抗がん剤を注入しました(左図)。
右図は処置後28日目のCT検査です。
がんカテーテル治療前に比べ、腫瘍が約9割消失し、明らかな腫瘍縮小効果が認められました。
現在、がんカテーテル治療から約半年経過しますが、腫瘍の再増大もなく、経過良好で観察中です。

2. 血管内ステント治療:血管系IVR

ステントは、体内の管状の部分を内側から広げるために使う器具です。
多くの場合は体に入れても害のない金属でできており、網目状の筒のような形をしています。
医学領域では狭心症や心筋梗塞の治療で行われる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)では、冠動脈の狭くなった部分を押し広げるために、先端に小さなバルーン(風船)を取り付けたカテーテルという医療用の細いチューブを使います。
獣医学領域での血管内ステント手術は適応症例が少ないものの後大静脈狭窄症(バッド・キアリ症候群)などによる腹水症には劇的な改善効果が認めたれます。

【実際の症例】

8歳 Mシュナウザー 雄
3ヶ月から原因不明の腹水が発生し、近医にて治療するも改善せず、当院を紹介受診されました。
検査にて後大静脈の横隔膜基部が狭窄する「バット・キアリ症候群」と判明しました。

後大静脈造影検査にて確認された狭窄部
治療には狭窄した箇所をバルーンで拡張し、再度狭窄しないように血管内にステントの留置が必要となります。
飼い主様も希望されたため、血管内ステント治療を実施しました。
血管内ステント設置後のレントゲン(右図)。
術後の後大静脈造影検査にて、術前に認められた狭窄が改善したのが確認されました(左図)。
術後経過は良好で、術後20日目には腹水は完全に消失しました。
現在術後約1年経過しますが、腹水も消失し経過良好、観察中です。

3. 気管内ステント治療:非血管系IVR

当院では、内科治療に反応が乏しい重度な気管虚脱の症例や気管内腫瘍で外科的切除が困難な場合に気管内ステントの設置を施術しています。
ステントを気管内に設置し、つぶれた気管を拡張させ、呼吸状態や咳の緩和を目的とします。
施術にあたり全身麻酔が必要となりますが、外科手術と比較して非侵襲的であることが特徴で、動物の体への負担軽減が図れます。
レントゲン透視装置を利用するため、外科手術のように切開する必要はありません。
術後も定期的なレントゲン検査が必要となり、状況により内科治療の継続や気管支鏡による検査および処置が必要になることもあります。

【実際の症例】

12歳 トイプードル 去勢雄
2ヶ月前から咳が認められ、近医にて内科的治療を継続しましたが徐々に悪化してきたためご紹介で来院されました。
診察時、重度の咳と呼吸困難が認められ緊急状態で来院されました。
レントゲン検査にて、胸部気管から気管支に及ぶ広い範囲で気管虚脱および気管軟化症が認められました。

重度の気管、気管支虚脱が認められた呼吸困難が重度で非常に危険な状態であったため、すぐに人工呼吸管理を行いました。
飼い主様とご相談し、呼吸困難の改善のために気管内ステント処置を実施しました。
気管ステント処置後
胸部気管虚脱が重度であったので、主に胸部気管にステントを設置しました。
処置後は呼吸困難も改善し、自力で呼吸可能となりました。
術後、軽い咳は継続して認められるため内科治療は継続しておりますが、息の詰まるような呼吸はなくなり安心して生活できると飼い主様も満足されています。
気管内ステントでは命に関わるような呼吸困難は改善できますが、ステント自体が気管の刺激となるため咳がなくなることはありません。その注意点を飼い主様にしっかり理解して頂くことがとても重要です。

4. 経皮的椎間板レーザー減圧術(PLDD):非血管系IVR

PLDDとは、Percutaneous Laser Disc Decompressionの略で、椎間板の中の髄核に刺したレーザーファイバーからレーザーを照射して髄核を蒸発させ椎間板ヘルニアを治療する方法です。
犬の椎間板疾患に対する半導体レーザーを用いたPLDDも安全性と有効性が確認され、椎間板疾患の新たな治療法として報告されています。
当病院でも現在、当院では薬や理学療法などと、手術の中間に位置する中間療法として、レーザーによる経皮的髄核減圧術を行っています。

PLDDの図解
レーザーを照射し髄核の一部を蒸発させ空洞をつくります(左図)。
空洞ができたことで神経根を圧迫していた髄核圧が下がります。
またレーザーは消炎鎮痛効果があると考えられております(右図)。
使用する器具、機材
半導体レーザー(飛鳥メディカル)

【実際の症例】

14歳 シーズー 去勢雄
2週間前から頸部痛と、後肢のフラつき(グレード2)があり近医にて2週間ほどケージレストによる安静と消炎鎮痛剤治療を実施しましたが痛みが継続して認められたため当病院を紹介、受診されました。症状から椎間板ヘルニアが強く疑われたためMRI検査を行いました。

MRI検査では、頸椎4番目と5番目、5番目と6番目の間の椎間板ヘルニアが確認されました(右図)。
また、胸椎13番目と腰椎1番目、腰椎1番目と2番目の間にも椎間板ヘルニアが確認されました(左図)。
臨床症状や経過、MRI画像所見から、慢性多発性のハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアと診断しました。
治療として内服で改善ないため手術がベストと伝えましたが、動物が高齢であったので飼い主様が手術以外の方法を希望されました。
そのため、今回は経皮的椎間板レーザー減圧術をご提案し、そちらは希望されたため実施しました。
経皮的椎間板レーザー減圧術では全身麻酔下にて、注射針と同じサイズの針を使用して治療します。頸椎(右図)と腰椎(左図)の療法を実施しました。
デジタルCアームレントゲン下で椎間板内に針が挿入していることが確認できます。
頸椎(右図)腰椎(左図)

レーザー焼烙時間は1箇所あたり5分ほどです。今回は4箇所行ったため、麻酔処置も含め30分ほどで終了しました。
経過は処置後4日ほどで頸部痛は消失し、20日ほどで後肢の歩行不全も改善し改善しました。その後は内服も終了し、治療終了となりました。
経皮的椎間板レーザー減圧術(PLDD)は今回の症例のように、高齢で慢性化した多発性のハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアに最も効果的で、改善率は80〜85%と報告されています。
急性の単発性のハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアにも効果はありますが、症状が急性な場合は通常の手術が最も効果的です。
症例の年齢や状態、臨床経過を踏まえてどの治療法が最も良い相談してもらうと良いかと思います。